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第3回「JDPイナバデザインスクールトーキョー」を開講しました(蔵前・アッシュコンセプト)

25/03/28 REPORT : デザイン経営のこれから

第3回「JDPイナバデザインスクールトーキョー」を開講しました(蔵前・アッシュコンセプト)



第3回目のテーマは、「デザイン経営のこれから」。
年度末のお忙しい時期にも関わらず、たくさんの方にご参加いただきました。

今回はレクチャーに先立ち、アッシュコンセプト代表取締役の名児耶秀美さんが考えるデザイン経営についてのプレゼンがあり、自信を持ってデザインしていこう、愛が大切という、背中を押してもらえるような素敵な言葉をたくさんいただきました。

【レクチャー】
ブランディングというと、最近は技術的なことを気にする方が多いことにもやもやしているという稲波校長。
そもそもなぜブランディングという考え方が必要なのかという話からレクチャーが始まりました。

昔は山登り型と言って、会社全体で頂上を目指していくやり方が多かったが、今は波の起こり方が毎年変わっていて、どう乗りこなしていくかを考えないと結果が伴いにくくなっていて、会社のそのもののあり方が少しずつ変わってきている。
デザインの流れとしても、デザインが起こった1700年の半ばから1990年くらいまでは”もの”中心のデザイン。1990年頃からは性能や新しさだけでは”もの”が売れにくくなり、ウェブや広告など広い意味でのメディアを通して” もの” の価値をいかに伝えるかのデザイン。2010年ぐらいからはその”もの”がどんな意味を与えるかを提示する”在り方”のデザインが求められる時代になっている。
そんな中で、在り方のデザインをどうやっていくかが、ブランディングに繋がる背景なのではないか。そして、自分たち( 会社、もの、人など) の新しい役割や価値を世の中に提供できるのかを問うのが、ブランディングの起点になると校長は考えています。

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【ワーク1】

まず左脳デッサンというワークからスタート。制限時間8 分で、天然水のペットボトルを題材に、形はそこそこに、どんなことに気づけるかを中心にスケッチし、表面に何があるかを読み取ってもらいました。
「キャップに矢印右に回せという指示の記号が書いてある」など、面白い気づきがあった人に発言をしてもらいましたが、水である、飲み物であるといった、そもそもの前提条件を気づいた人はいなかったことを指摘しながら、既知のことがらに意識をむけ、改めて問い直す姿勢を大切にしてほしいと話す稲波校長。

次に右脳デッサンということで、目の前のペットボトルをあるがままに描いてもらいました。
水面がゆらゆら揺れていたり、透明で向こう側の景色が透けていたりする色んな表情のややこしさを感じながら見るのがポイント。
2 種類のデッサンを通して、日常においてもモノの見方としても重要になってくる俯瞰・全体・立体といった複合的な視点を体験してもらいました。

【レクチャー】

まず経営において、会社の経糸、つまり軸の存在が大事だと校長は言います。
経営の仕方が、従来の山登り型( 目標に対して計画的にやることを積み重ねていく方法) から波乗り型( 社会の状況という変化の波に対して都度やり方を変えていく方法) に変わってきている中で、この軸がないと自分たちが何をやっているのかが分からなくなり、うまく波に乗れなくなってしまう。
この軸をどうつくるかが、デザイン経営の概念のポイントの一つになります。
一方でデザイン自体も、もの→メディア→広告→在り方と、軸を変化させてきました。
在り方のデザインが問われる今の社会において、より会社が何のために事業をやっているか、そもそもの価値を考えていく上で、全体観が大事になってきています。
軸を持ちながら、波に乗る必要がある中で、一部分だけ見ていても振れ幅が小さくなってしまうため、右脳デッサンでやったように大きい視点と小さい視点の間を行き来して捉えていくことで、色々な情報や視野が獲得でき、意味がある状況を作っていけるようになると。

この右脳的なモノの見方ができる人が会社の経営層にあまり多くないという現状ある中で、” 意味のない行動” を重ねることが大事だと校長は考えています。

自分たちの軸はきちんと持ちながら、利益度外視で、面白そう!とピンときたことをやってみる。それだけで会社の幅を広げていくことができ、デザインというものを経営の力にできるのではないか。

参加者から質問を受け、大企業・中小企業でどのようにデザイン経営を取り入れ、生き残っていくのか、ディスカッションも大変盛り上がりました。

【ワーク2】

やってみる上で根本になるデザイン思考を、本日2つ目となるワークで体験してもらうことに。
自分の会社の中にデザイン思考を取り入れるとテーマで、会社の課題の中で、それを解決することで色々なことがよくなりそうなものを一つ取り上げてもらい、それに対してアイデアを出し、コンセプト・概念化するという思考のプロセスを回して、書き出してもらいました。

【まとめ】

特許庁が出しているデザイン経営コンパスの図も用いながら、本日のまとめに。
山登りと波乗りは混ぜると上手くいかないため、使い分けることが大切。やってみるの先に、価値・意味づくりがあって、存在意義、在り方に繋がっていきます。
軸を整えるのがまず大事で、そこから文化醸成、人格と組織の文化が合わさって、会社の価値に。

【感想】

・自分自身は波乗り型だが、山登り型の人とも仕事をするので間に立って仕事をしていきたいなと思った。天然水のパッケージが凝ったデザインだということに気づけた。

・普段マニュアルに沿った仕事が多く、言語化したり、サイクルの中の問題提起からするのはしたことがなくて、何も言葉が出てこなくて固まる時間が多かった。できれば続けていきたい。

・過去2 回とも違う層で楽しかった。企業勤めだとやれない理由は山のように出てくるが、やってみるって発想がすごく面白い。やらなきゃなと思った。