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第100回目の企画展「かちのかたちたち展―捨てる手前と後のこと」オープニングトークを開催

第100回目の企画展「かちのかたちたち展―捨てる手前と後のこと」オープニングトークを開催


  • 更新日:2023.02.09
  • 執筆者:東京ミッドタウン・デザインハブ

2022年12月4日(月)から12月25日(日)まで、東京ミッドタウン・デザインハブにて、記念すべき第100回目の企画展「かちのかたちたち展―捨てる手前と後のこと」を開催しました。

東京ミッドタウン・デザインハブ第100回企画展「かちのかたちたち展ー捨てる手前と後のこと」
https://designhub.jp/exhibitions/8267/

デザインハブの様子

「どこからがゴミで、どこまでがゴミではないのか?」その境界に焦点を当て、第一線で活躍するデザイナー、クリエイターそれぞれのゴミに対する価値観を紹介しながら、世界や日本でのサーキュラーの先行事例や学生作品を通し、ゴミの認識の転換について皆で一緒に考えることをテーマとした企画展です。

12月10日(土)には、本展の関連イベントとして、本展ディレクターの永井一史氏(多摩美術大学 統合デザイン学科教授)と、本展企画構成の前村達也氏(多摩美術大学 統合デザイン学科非常勤講師)によるオープニングトークを行いました。

本展の成り立ち、グラフィックデザインについて

はじめに、本展の成り立ちについての紹介がありました。展示物をひとつずつ解説しながら、どうやって企画が生まれ、準備時間の少ない中で制作が進んでいったのか?などが話題となりました。

タイトルが「かちのかたちたち」に決まり、ゴミの定義や、日常の中でゴミについて何を感じるか?日本昔ばなしにあるカチカチ山のようなストーリーも意識した、と前村氏。本展グラフィックデザインの木住野彰悟氏(6D)にテーマを伝えたところ、様々なバリエーションのビジュアルの提案をいただきました。価値観は、三者三様で決まった形がありません。このビジュアルの破片のように、形が決まっていないもの、人それぞれの想像にゆだねる形のデザインとなりました。

今回はゴミがテーマですが、展示会は見せたら終わりで什器がゴミになってしまうことが多くあります。展示物だけではなく、什器を含めた展示全体のサーキュラーを検討することも、ひとつの目標となりました。

会場入口付近の参加型展示では、会場内にあるゴミを模したステッカーを来場者が貼っていくことで、新しいかたちのビジュアルが作られていきます。デザインハブの会場は入口と出口が同じ構造なので、ただ戻っていくだけではない参加型の仕掛けが作られました。

デザインハブ エントランス部分

会場入口付近の参加型展示

多摩美術大学のサーキュラーの取り組み

多摩美術大学は、2021年より共創プロジェクト「すてるデザイン」に取り組んでいます。「つくることで暮らしを支えてきたデザインから、すてるを考えて社会や暮らしを支えるデザインへ」をコンセプトに、同じ課題意識を持つパートナー企業と共に、廃材を使った商品開発、コンソーシアムブランド設立など複数の社会実装を行っていて、そこでの知見も本展に反映されています。

「ゴミとは何か?」を最初の問いとして、その定義や今までのゴミにまつわる歴史的な出来事の紹介がありました。ゴミは、ゴミ箱に入れた瞬間に自分との関係がなくなるのが通常のプロセスですが、「どこからがゴミで、どこまでがゴミではないのか?」という中間を考えることが今回の企画につながった、と永井氏。
今はいわゆるリニアな社会で、ものは生産され使い終わったら廃棄、廃棄されたら意識の外へ消えていきますが、その中でこぼれ落ちるものを戻し、少しでも円に近づけていくことが大切であると、サーキュラーの概念が解説されました。

サーキュラーの図

多摩美術大学の学生作品

前村氏の暮らしの中のサーキュラー

前村氏は、ヨーロッパの教育機関やフィンランドの行政機関を回り、サーキュラーやゴミ問題を探求するサバティカルリサーチの経験を経て、2018年より長野県御代田に拠点を持ち、東京とのデュアルライフをしています。コミュニティでの共同作業や仕事、薪割りや農業など暮らしの中のサーキュラーを紹介しながら、その中で今回の企画展の着想につながった物々交換のエピソードが話題となりました。

本展で制作した展示台は、会期終了後に多摩美術大学卒業制作展での再利用だけではなく、前村氏が御代田にて建設中のオフグリッドハウス(電気・ガス・水が通っていない家)の材料となる予定です。展示台を廃棄ではなく再利用することで、新しい価値のトランスフォーメーションを目指しました。

御代田での暮らし

物々交換した薪と3Dプリンター

サーキュラーは、気候変動のような地球規模の課題からエシカル消費のような個人の課題まで、とても幅が広い領域です。それらを繋いでいくこともポイントになりますが、今回の企画展では、個人がゴミについて考え始める入口の部分にフォーカスしました。
そういった入口や小さなステップがたくさんあることで、少しずつ渦のような大きな動きへ繋がっていくのではないでしょうか。物事を広げていくときに有効なデザインとして「システミックデザイン」の考え方に注目が集まりそうです。

本トークイベントの動画アーカイブは、多摩美術大学TUBのYouTubeチャンネルにて無料でご覧いただけます。


東京ミッドタウン・デザインハブ第100回企画展「かちのかたちたち展ー捨てる手前と後のこと」概要
会 期:2022年12月5日(月)〜12月25日(日) 会期中無休
時 間:11:00〜19:00
会 場:東京ミッドタウン・デザインハブ (東京都港区赤坂9 丁目7 番1 号ミッドタウン・タワー5 階)
入場料:無 料

主 催:東京ミッドタウン・デザインハブ
運 営:多摩美術大学 TUB
監 修:永井一史(多摩美術大学 統合デザイン学科教授)
企画構成:前村達也(多摩美術大学 統合デザイン学科非常勤講師/SCALE ONE Inc.)
グラフィックデザイン:木住野彰悟 (6D)
会場構成:吉田あさぎ


多摩美術大学 TUB